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ウィルス対策

 

 

 

 

いまだ梅雨が明け切らず、じめりとした気候が続く7月初旬。

 

 

「へっくち!」

 

 

クレアミルちゃんのくしゃみに振り返ったミル子ちゃんは、ちょっとイヤそうな顔をしました。

 

 

「なぁに? もしかして風邪?」
「いや、あるいは誰かに噂されてるのかもね」
「そう……気を落とさないでね。たまにはそんな日もあるわ」
「悪評と決めつけるのはやめてもらおうか」

 

 

テーブルの上のティッシュを引き寄せていたクレアミルちゃんは、そこでぶるりと背筋を震わせます。

 

 

「……でも風邪かと言われてみれば、なんとなく寒気がするような気がする」
「ええっ、やめてよね。伝染さないでよ? 息しないで?」
「その言い草よ」

 

 

ずりずりと椅子をずらして距離を取るミル子ちゃんに、クレアミルちゃんは湿った視線を返しました。
しかしミル子ちゃんはそんな視線をさらりと受け流して、ちゃっかりマスクを取り出しています。

 

 

「ウィルス対策をちゃんと行わないのが悪いのよ。社会人として常識でしょ?」
「最近まったく外には出てなかったんだけど、おかしいなぁ」
「ローカルネットワークで完結してたとしても、USBとかから感染することもあるんだから油断しちゃだめよ」

 

 

そして今なお椅子を引きずって遠ざかっていたミル子ちゃんはしばらくすると、マスクまでしたのに念のためにと帰って行きました。
曰く「ファイアウォールだけで安心しちゃいけない」とのこと。

 

 

 ・ ・ ・

 

 

次の日、さほど体調を崩すことなく復調したクレアミルちゃんは、ミル子ちゃんがまんまとウィルスに感染して寝込んでしまったと聞きました。
うつしてしまったのが自分だったら申し訳ないな、とクレアミルちゃんが気を病んでいると、しかしそこで気になる噂を耳にします。

 

その噂というのが、最近ミル子ちゃんが訪れた先の人たちが、次々と風邪を引いているというものでした。

 

そういえばクレアミルちゃんが風邪を引く少し前、ミル子ちゃんが家に来ていたのを思い出します。
たしかその時ミル子ちゃんは、くしゃみをしていました。

 

 

「もしかして、ミル子ちゃんがウィルスの宿主だったのでは……?」

 

 

ウイルス感染でもっとも恐ろしいのは、感染した人が気づかずに他PCへアクセスして、ウィルスをバラまいてしまうことです。

 

 

クレアミルちゃんがミル子ちゃんの噂を耳にしていたちょうどその頃。
ウィルスでダウンしていたミル子ちゃんは、自宅の寝室でくしゃみをしていたのでした。

 

 

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