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ヨミモノ(第23話:電脳麻雀グランプリ)

 

 

 

新年も無事に迎え、精力的に働き始めるハローワールドの住人たち。
寒々とした冬の空模様を尻目に、仕事が一区切りついたクレアミルちゃんは新たな試みに挑戦していました。

 

熱心にパソコンの画面を見つめるクレアミルちゃんに、遊びに来たミル子ちゃんは怪訝な様子で話しかけます。

 

 

「クレアミルちゃん、それはなにをやってるの?」
「うん? 見ての通り麻雀だよ」
「それはなんとなくわかるんだけど……それ、他の人が揃えてるのも見えちゃってない? そういうものなの?」

 

 

ミル子ちゃんの言うとおり、クレアミルちゃんが見つめている画面では、他家の手牌まで見えてしまっています。

 

 

「ああ、これは自分たちが打ってるんじゃなくて、自分たちがプログラムしたAIが代わりに打って戦ってるんだよ」

 

 

クレアミルちゃんの言う通り、操作している様子もないのにクレアミルちゃんの手牌が勝手に切られていきます。

 

 

「電脳麻雀グランプリっていう企画でね。今はそのリーグ戦をしているところなんだ」
「ふぅん……麻雀はよくわからないけど、AIの出来には興味あるわね。誰が勝ってるの?」

 

 

椅子を引っ張ってきたミル子ちゃんに場所を空けて、クレアミルちゃんは戦況を解説し始めました。

 

 

「まずAI作者たちの実況チャットで【ゴミ拾い君】と名付けられてるのが、この右側のプレイヤーだね。現在最下位だよ」
「ゴミ拾い……?」
「ポン、チー、カン、とにかくなにか揃ったら絶対に鳴いて、他の人が河に捨てた牌を拾っていくんだ。だから【ゴミ拾い君】」
「強いの?」
「とても弱い」

 

 

三巡目にして早くも裸単騎となった【ゴミ拾い君】は、残る一枚の手牌を握りしめて役無し待機を始めました。
おそらく鳴きに関する設定を緩めに作ってしまったため、こんな酷い動きをしているのでしょう。

 

 

「次に【染色工】と呼ばれてるのが、今一番ポイントが高い奥側のプレイヤーだね。とにかく手牌を染めようとするんだ。字牌すら捨ててるから清一色の一点狙いだね」
「ふぅん……よくわからないけど、捨ててるのは漢字の牌だけなのね」
「よほど萬子が憎いんだね。全部無くなったらそのうち筒子も捨て始めるよ。さっきもそれで偶然清一色が揃って、単独トップに躍り出ちゃったんだ」

 

 

揃える役を一つに絞ったのは、結果的に悪くない指針だったようです。
少なくともバグじみた挙動はせずに済んでいるのですから。

 

 

「そして左側のプレイヤーが【ビリ狙い君】だよ。現在二位だね」

「……」

「この子は基本的に手堅い打ち筋なんだけど、一体どういう思考ルーチンをしているのか、最下位プレイヤーからしかロンしないんだ」
「一番弱い人しか狙わないってことね」
「そういうこと。最初は自分が一位だから最下位をトバして勝とうとしてるのかと思ったけど、二位になってからも続けてるからそういう習性なんだろうね」
「攻撃する相手の優先設定だけミスっちゃったのかしら……」

 

 

【ビリ狙い君】も安い手で和了ってじわじわと得点を重ねているようですが、大きいのを一発当てた一位にはまだまだ届かないようです。

 

 

「ということは、クレアミルちゃんは現在三位なの?」
「そういうことだね。ちなみにチャットでは【テンパイ侍】とか呼ばれてる」
「ど、どういうこと?」
「ノーテン流局したプレイヤーから奪った点棒だけで生きてるの」
「ロクでもない状態だってことだけはわかったわ」

 

 

クレアミルちゃんは平和だけを狙うという手堅いルーチンを組んだつもりだったのですが、設定を間違えたのかロンができないのです。
そのためテンパイはできてもあまり和了れていないクレアミルちゃんは、ノーテンだった他家から奪い取った点棒だけで糊口を凌いでいました。

 

 

「この中なら、一番強いのは誰になるの?」
「これは強いAIじゃなくて、比較的マシなAIを決めるグランプリだから」
「そう……」

 

 

この電脳麻雀グランプリで見応えのある対局を見られるのは、もう少し先の話になりそうです。

 

 

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