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ヨミモノ(第20話:業界用語)

 

 

 

 

夏の暑気もすっかりなりを潜め、季節の移ろいを感じる今日この頃。

 

【ハローワールド】唯一の喫茶店でアフタヌーンティーをしばいているのは、クレアミルちゃんとサーバーくん。

体温が上がりやすいサーバーくんも、近頃涼しくなりようやく外出できるようになったのです。

 

するとそこへ、たまたま二人を見かけたミル子ちゃんが入店してきました。

 

 

「こんにちは、クレアミルちゃん、サーバーくん」
「やぁ、ミル子ちゃん。奇遇だね」
「こんにちは、ミル子ちゃん」

 

 

三人は和やかに挨拶を交わすと、ミル子ちゃんは「そういえば」と口を開きます。

 

 

「クレアミルちゃん、例の件はどうなってる?」
「例の件?」
「しまってあるお金のデータを握ってるの話よ。あの後、ちゃんと吐いたの?」
「あ~、あれは全然ダメ。何回叩いても、ちっとも吐かなかったね」

 

 

日常会話のような気軽さで、二人の口から過激な発言が飛び出しました。
それにギョッとしているサーバーくんには気づかず、クレアミルちゃんとミル子ちゃんは話を続けます。

 

 

「ふぅん……じゃあもういいわ、いらない。新しいを用意するから、もう殺しちゃって
「うん、わかった。それならの方も用済みかな?」
「もちろん。全部殺して。すぐにね」
「はいはい」

 

 

ミル子ちゃんは言うだけ言うと、「それじゃあ私は仕事だから」と言って喫茶店を後にしました。
本当にたまたま見かけたので声をかけただけのようです。

 

 

「ミル子ちゃんはせっかちだねぇ。……あれ、サーバーくん? どうかした?」
「え、あ、いや……」

 

 

当たり前のように交わされていた会話に、サーバーくんは青ざめながら口ごもりました。
サーバーくんが周囲を見渡せば、神妙な顔をしているお客たちが、二人を見ながらヒソヒソと囁き合っています。

 

そして当の本人であるクレアミルちゃんだけが、状況に気がつかずきょとんとしているのでした。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

翌日。

 

同じ喫茶店の、前日よりも奥まった席に陣取っていたクレアミルちゃんとサーバーくんが談笑していると、

そこへずかずかと足音を響かせてミル子ちゃんが近づいてきました。

 

 

「ちょっとクレアミルちゃん、聞いたわよ! 殺せなかったってどういうこと!? 何をしくじったのよ!」
「いや、の方はちゃんと殺したんだけどさ……その子供に生き残りがいたみたいで」
「もう! ちゃんとを調べて上げて、どれくらいがいるか確認してから殺せって言ったでしょ!」
「最初に中を覗いた時は全部殺したつもりだったんだけど、どうも別のところに隠れてたがいたみたいなんだよ」
「ちゃんと隅々まで探さないとダメじゃない。あとから生き残ってるのが見つかったら面倒よ」
「ごめんごめん。今はそのと周囲の関係性を洗い直してるところだから、全部の繋がりを切ったらすぐに消すよ」
「動かなくなったからって油断しないで、ちゃんと死んだか確認しときなさいよ?」
「わかってるよ。ただ、もし変な動きをするのが出たらどうする?」
「その時は私が上で握り潰すから大丈夫よ。でもなるべく問題は起こさないようにね」
「了解」

 

 

ひとしきり話を終えた二人は、「まったくもう」「いやぁごめんごめん」などと朗らかに笑っています。

 

そしてすぐ近くで話を聞いていたサーバーくんは気がつきました。
隣のテーブルに座っていたお客が、緊迫した雰囲気で携帯を取り出したことを。

 

 

「いやぁ二人とも休日にプログラムの話をするなんて真面目だなぁ!! これは僕も見習わないとなぁ!!!!」

 

 

サーバーくんのやけくそ気味なフォローによって、クレアミルちゃんたちはどうにか通報を免れたのでした。

 

 

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