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ヨミモノ(第19話:心の花)

 

 

 

 

梅雨の時期も終わりを迎え、ハローワールドにもいよいよ本格的に夏の日差しが注ぎ始めた今日この頃。

 

クレアミルちゃんの家へ遊びに来たミル子ちゃんは、そこでテーブルの上に置かれたプランターに気が付きました。

 

 

「あらクレアミルちゃん、また新しい植物を育て始めたの?」
「そうなんだよ! 素敵な種を見つけてきてね。どんな花が咲くのか楽しみだよ!」

 

 

プランターにはふかふかの土が敷き詰められ、そこから小さな芽が二つほどピョコっと顔を出しています。

 

 

「いくつか芽が出てるわね。でもまだまだスペースには空きがあるのに、これだけしか植えてないの?」
「入れられるギリギリいっぱいまで詰め込めば良いってもんでもないからね。ちゃんと管理してあげられる分だけ植えないと」
「そうね、たしかに。養分にも限りがあるものね」
「うん。増やすのは少しずつでもいいんだよ。大切に育てられればね」

 

 

とはいえクレアミルちゃんのガーデニングは数年ほど続いているため、今やたくさんの種類の花を咲かせていました。
そろそろプランターを置く場所にも困ってきたというのが最近の悩みのようです。

 

 

「結局、土壌の管理が一番大事なんだよね。土の栄養がなくならないように気を付けてないとダメだし、その植物に適した酸性もあるからね」
「そうなの? ……ああ、外の土を入れたり、別のプランターに入れ替えたりとかするのよね」
「そうそう。土壌が悪かったり適してないと、何年経ってもなかなか芽が出なかったりするんだよ」
「へぇ、なるほどねぇ」

 

 

ミル子ちゃんは自分が三日坊主である自覚があるのでガーデニングはあまりしないのですが、
楽しそうに話をしてくれるクレアミルちゃんを見ていると、だんだん興味が湧いてきました。

 

 

「他に気をつけなくちゃいけないことはあるの?」
「やっぱり水を定期的にあげるのは忘れないようにしないとダメだね。ただし量は多すぎても腐るし、少なくても枯れちゃう。そこは気を付けないとね」
「まだ芽が若いうちは少なくてもいいけど、大きくなってきたら少しずつ増やしていくわけね」
「そうだね。あとは栄養剤を刺したりとかもするかな。あんまり甘やかすとダメだから、たまにだけどね」

 

 

力説するクレアミルちゃんの言葉にミル子ちゃんは同意を示しつつ、ふと日差しの良く当たる窓際へと目をやりました。

 

 

「……ところで、プランターは窓際に置かなくてもいいの?」
「うん。窓際族は可哀想だからね」
「いやそういうこと言ってんじゃなくてね?」

 

 

謎のこだわりで日光をあまり浴びせていないクレアミルちゃんに、ちゃんと育てていけるのか若干不安になるミル子ちゃん。
彼女はクレアミルちゃんの育てている植物たちを見渡して、とあることに気が付きました。

 

 

「あら? 前に来たときは、黒くて大きな花がなかった? あれはどこに行ったの?」
「……………………」
「クレアミルちゃん?」
「……うん、あれはね、欲しいって言う人がいたから、あげちゃったんだ」

 

 

内心を覗かせないクレアミルちゃんの笑顔に、ミル子ちゃんは何も言わずに「そうなの」と相槌を打ちます。

 

 

「立派な花だったものね。私も欲しいくらいだったわ」
「いやぁ、そう言ってもらえて、鼻が高いよ」
「ふふふ」
「あはは」

 

 

今日もハローワールドは平和です。

 

 

 

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