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ヨミモノ(タイトル:EverGreenVision)

 

 

 

 

 

時折思い出したかのように、春の陽気も窺わせるようになってきた【ハローワールド】。

今日もここに住むITの妖精さんたちは、仲良く遊んだりおしゃべりしたり受託開発したりしながら、

平和に過ごしていました。

 

そんな中クレアミルちゃんは、幼馴染のミル子ちゃんを訪ねていました。

几帳面なミル子ちゃんはいつも自分の予定をグループウェアの予定表にしっかりと書き込んで

いるのですが、ここ一週間ほどは自宅に篭りきりのようでしたので、気になって来てみたのです。

 

そうして訪れたクレアミルちゃんを出迎えてくれたミル子ちゃんは、なぜか全身に温度センサーを

貼り付けまくり、得意げな表情を浮かべていました。

 

 

「よくきたわね、クレアミルちゃん!」
「…………」

 

 

全然状況が掴めないクレアミルちゃんでしたが、しかし長い付き合いである幼馴染の

やることです。

きっとなにか意味があるのだろうと、オブラートに包んだ言葉を投げかけました。

 

 

「えっ、なんでそんなセンサー貼り付けてるの? 怖っ……」
「うふふ、よくぞ聞いてくれたわね!」
「おいおい全然へこたれないぞこの子」

 

 

オブラートに包んだ拳によるボディブローを、あっさりと受け流すミル子ちゃん。
彼女は全身にペタペタと取り付けた温度センサーをジャラジャラ言わせながら、

得意げに胸を張りました。

 

 

「ふっふっふ。これはね、パソコンやPLCと連動して摂取カロリーと消費カロリーの数値化を行う、

夢のシステムなのよ!!」

 

 

そう言いながらミル子ちゃんがパソコン画面をこちらに向けると、そこには見慣れた

EverGreenVisionの画面が映し出されています。
グラフィック部分にはミル子ちゃんの全身図と、身体の各所に取り付けられた温度センサーの

表示値が貼り付けてありました。

 

 

彼女がなにをやっていたのかを察したクレアミルちゃんのつぶらな瞳が、たちまちドブ沼のように

濁り腐っていきます。

 

 

「あら、なによその目は? さては疑ってるわね!」
「正気をね?」

 

 

もうすぐ世間は雛祭りだというこの時期に、センサーを全身に貼り付けてご満悦な幼馴染の姿。
彼女がどこを目指しているのか、これはクレアミルちゃんでなくても心配になる事案です。

 

 

「ふふん、まぁ見てなさい」

 

 

そう言ってミル子ちゃんが慣れた手つきで画面を操作すると、【昼食】と書かれたコンボボックスが

現れました。

 

 

「まずここで食べ物の種類と量を選択すると、データベース上に登録されている食品別カロリーを

参照して摂取カロリーを算出・記録してくれるの」
「くっそぉ、無駄に凝ってるんだよなぁ……」

「そして体の各所に貼り付けたセンサーが体表面からの放熱を検知して、高い精度で

消費カロリーを算出してくれるのよ!」

 

 

 

ミル子ちゃんが説明している間にも、彼女の全身に取り付けたセンサーは放熱を検知し続けて

います。

【0.13 kcal】と瞬時値を表示している隣では、一日積算消費カロリーと銘打たれた【689.5 kcal】と

いう数値が増え続けていました。

 

そして画面右上に表示された【達成度】というのは、現状の摂取カロリーを目標値とした

消費カロリーの割合を示すものでしょう。

 

 

「ほんとミル子ちゃんって、たまに意味わかんないくらい才能と労力の無駄遣いするよね……」
「まぁこれの元になったシステムは、すぐに熱を出しちゃうサーバーくんのために作ったもの

なんだけどね」

 

 

難しいことを考えるとすぐに体温が上がってしまうサーバーくん。
そんな彼のためにと、ミル子ちゃんは体温管理システムを製作していたようです。

 

 

「“体熱”を測定するこのシステムを、私は FeverGreenVision と名付けたわ!」
「いやGreen要素がまったく無くない!? さながら NeverGreenVision だよ!?」

 

 

「看板に偽りあり」なシステム名に物申しながらも、クレアミルちゃんは好奇心に負けて

そのシステムを横から操作してみます。

 

 

「無駄に造りはしっかりしてるんだよなぁ……うわ、ちゃんと日報データとかも見れるし……あれ?」
「あっ」

 

 

クレアミルちゃんが表示した日報データによると、一週間くらい前からミル子ちゃんの

カロリー管理は始まっているようです。
そして最初の二日は【達成度】が100%を超えていたのに、そこから日に日に達成度は

下がり続ける一方。

昨日なんて、達成値の7割にも達していませんでした。

 

 

「あのね、ミル子ちゃん。「見える化」と言ったら単にエネルギーを見えるようにすればいいと

思われがちだけど、じつは違うんだよ?」
「はい……」
「見えるようになった数値を元に何が問題なのか、またどうすれば数値を適正値に向けて

舵切りできるかを模索するのが本来の「見える化」の意義なわけで」
「はい……」
「言うなれば手段の一つでしかない「見える化」をゴールだと勘違いして満足するのは

本末転倒も甚だしいと言わざるを得ないわけで」
「はい……」

 

 

いつの間にか正座をして縮こまっているミル子ちゃんと、仁王立ちで懇々とお説教を続ける

クレアミルちゃん。

 

彼女へのお説教が終わった頃、ミル子ちゃんの一日積算消費カロリーは、1200kcalを

超えていたのでした。

 

 

 

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